8/22〜8/24の日程で、南アフリカのヨハネスブルグでBRICSの首脳会議が始まっています。
BRICSとは中国・ロシア・インド・ブラジル・南アフリカの新興5カ国で創る国際枠組みで、今や世界人口のおよそ40%、GDPのおよそ40%を占めると言われています。ゴールドマン・サックスは2050年には、GDPで中国がアメリカを抜いて世界1位となり、インドが3位、ブラジルが5位、ロシアが6位になると予測しています。
新型コロナワクチン絡みでアメリカ覇権主義やグローバリストの思惑などの情報に行き着いた方々の中には、このサミット開催の情報を追っておられた方も多いと思います。
実際私も、コロナ騒動やコロナワクチン接種の必要性への疑惑に端を発して、いろいろと情報をたどるうち、日本社会に多大な影響力を持つアメリカ政府や連携する国際金融資本の存在を知り、ロシアのウクライナ侵攻の真相などの壮大な規模の国際的謀略に関心を持って注視するようになり、それに対抗するBRICSの動向に注目するようになりました。
このBRICSは欧米主導の国際秩序に対抗するため、毎年サミットを開催していますが、今年のサミットは特に注目されているんです。
その理由は脱ドル化、そしてドルに代わる新しい基軸通貨、BRICS新通貨の策定です。
今軍事・経済的に揺るぎない強さを誇るアメリカですが、この盤石の地位のそもそもの発端は1974年の秋。
当時のニクソン大統領は突如、金保有に裏付けされたドルを国債決済システムとする金本位制から突如離脱を表明します。
そして一方で、当時世界最大の石油産出国であるサウジアラビアとこのような契約をしました。
「サウジアラビアをイスラエルを始め、他のアラブ諸国からのどんな脅威からも守る。」
その見返りとして
①石油取引の決済はドルで行うこと
②産油国はすべて、石油売買で得た利益でアメリカ国債を購入すること
を求めたのです。
再生可能エネルギーなどない当時、あらゆる国が唯一の決済貨幣であるドルを求めるようになります。また米国債の購入を義務付けたことから、最終的に莫大な資金がアメリカに転がり込むことになりました。
こうなればもう怖いものなどありませんね。
金の代わりに原油を軸にすることでドル価値の安定を図る。
これが世に言う《ペトロダラーシステム》の始まりです。
こうしてドルの価値が上がり、潤沢な資金を得て、歴史的インフレや失業率10%超えだったアメリカ経済は世界最強の国家へと駆け上がっていったのです。
以来、50年にもわたって続いているペトロダラー体制。
この社会主義のような相場管理によって格差は拡大し、富の一極集中を引き起こしました。
またウクライナ侵攻を理由にアメリカは、NATOの領土拡大とこのペトロダラーシステムに対抗するロシアのプーチン大統領を絶対悪として西側諸国のプロパガンダの槍玉に挙げ、ロシアに対し厳しい経済制裁を続けていますが、それ以前にもペトロダラーに反旗を翻した国や指導者をことごとく制裁してきました。
・金の裏付けのあるアフリカ共通通貨で原油を売却しようとしたリビア(カダフィ大佐)⇨暗殺
・オイルダラー体制を見限ったイラク(フセイン大統領)⇨イラク戦争ののち逮捕、死刑。
・石油取引を人民元でしようとしたベネズエラ⇨米国内のベネズエラ資産を凍結し米国企業との取引全面禁止
蜜月関係だったイランも1979年のイラン革命以来敵対関係に転じてからは、「悪の枢軸」として制裁を開始してドル決済を停止、事実上国際金融システムから追放されています。
ですが実は今このシステムは大きな転換点を迎えています。
増え続ける赤字財政を維持するために、金の裏付けがないドルを刷りつづけてきたことによる”自作自演相場”がいよいよ体裁を保てなくなり、ドルの購買力がすごい勢いで縮小しているのです。
もはやアメリカ経済は破綻寸前で、今年の6月にも「ついにデフォルトか」と世界から注目されていたことも記憶に新しいと思います。
ペトロダラーの矛盾の原因はモノ(金)の裏付けのない紙切れ(ドル)の信用を中心にしていたことです。
世界は今、実体のないドルではなくモノの重要性への関心を強めていっています。
BRICSはまさにこのタイミングで今回ドルに代わる新しい基軸通貨となり得る、金に裏付けされた新通貨を打ち出そうとしていると言われています。この共通通貨が石油取引の決済手段となれば、これまで無敵の強さを誇ってきたアメリカドルの価値は相対的な下落を引き起こすでしょう。そしてそれに伴い、不当に抑えられてきた金価格の高騰が噂されています。
少なくともサミット初日に早くも、各国の脱ドル化の宣言がなされています。
西欧はひとまずこの動きに対して、大手メディアは勿論無視を決め込む方針のようですし、経済記事などでも「ドルに取って代わるほどの影響力なし」とするものが目に付きます。
とりあえずはライバルというほどではではないというポーズを取っている様子。
しかし今回のサミット発表のあった7月10日頃からの金価格の推移を見てみると、3月の高騰以降ほぼ横ばいだった価格がひと月以上下落し続けてきました。同時にドル円は8月に入ってから上昇し145円台に突入、150円に接近しつつあります。
アメリカ長期金利の上昇でのこの相場だと言われますが、懸案の新通貨の信用を裏付ける金価格を上昇させたくないアメリカの思惑がないとは言い切れないような気がします。タイミング的に微妙な感じですからね。
ちなみにこの金価格、一昨日の現地初日の「脱ドル化」宣言が出るや否や、もう現金なハネ上がりを見せています(8/23発表の米企業PMI 速報値を受けた米国債利回りの下落が原因という見方もできますが・・)。
出典:Bullion Vautl HPより
7月にはFRBが政策金利を0.25%引き上げ、さらに9月にも予告された後1回の利上げと、あるいはさらなる追加利上げも年内に実施する可能性もあります。市場からは目が離せません。
第二次大戦以降から数えれば約70年にも及ぶ、先進国への不信感から生まれたアメリカ主導経済への挑戦であるBRICSのドル依存からの脱却。
全世界の脱ドル化の流れを受けて、満を持してのこのタイミングなのかもしれません。
この後の世界経済の行方がどうなるかはまだ分かりませんが、少なくとも新たな二極化は避けられないように思います。
今回のサミットでは新通貨発表までいかず、米ドル回避のためのBRICSの中だけで使える新しい共通決済システム構想・・すべてRで始まる人民元、ルーブル、レアル、ルピー、ランドの「R5」が本命であるとの話も聞かれ、SNSで噂されているようなドラマティックな一気呵成の展開はないかもしれません。しかしすでにBRICS+(プラス)への加盟を希望する国は40ヵ国以上あり、うちイラン、ベネズエラ、アルジェリアなど22ヵ国は正式加盟を打診済みだそうで、今後の加盟国拡大は間違いありません。世界はアメリカドルに固執する経済圏とグローバルサウスのBRICS経済圏の二つの潮流に分かれていくのではないでしょうか。
日本国内ではBRICSについて積極的な報道はありませんが、このように大きな歴史的転換点を迎えつつある状況でアメリカはG7グループのメンバーとして日本により一層の協力を求めるでしょう。その結果日本がこのままアメリカのもとで金融緩和(円安)路線を続ければ、その結果、通貨価値の下落によってハイパーインフレに見舞われるという最悪のシナリオも絵空事ではないでしょう。
少なくともことによればアメリカと心中するかもしれないこの日本経済の影響下で暮らす私たちは、mRNAワクチンやマイナンバーカードと同様に、どのように被る悪影響を最大限小さくするか個人レベルでの対策を考えていく必要がありそうです。